Vol.22 大切と思うことのために時間をかける豊かさ
5月21日(土)~22日(日)、石川県に出張が決まったので、富山県で観光&前泊することにした。
はぜには「47都道府県を制覇する」という小さくて大きな夢がある。
今回の富山県で、24都道府県を制覇した。残り23府県。
富山県には現職1年目からお世話になっているN氏がいる。富山県前泊を決めてすぐに「観光名所を教えてほしい」とお願いしたところ、なんとN氏直々に案内していただけることになった。しかも、はぜが尊敬する群馬県のK氏も同行することが決まり、テンションMAXになった。
5月20日(金)、高松駅→岡山駅→新大阪駅からサンダーバードで金沢入りし、その足で高岡駅へ。到着すると、N氏とK氏がお出迎え。
富山県民&群馬県民&香川県民の楽しい3人旅がスタートした。
懐かしさに溢れた富山県の旅
まず観に行ったのは「獅子の子落とし」。
南砺市井波町は、日本一の木彫彫刻の地として、現役職人さん約300人が居住している。この「子落とし」は、井波町開町600周年を記念してつくられたもの。
親獅子が落とした4匹の子どもが、谷を登ってくる姿が彫られている。表からは見えないが、東西南北に一匹ずつ子獅子がいる。それぞれ姿が違ってとても可愛い。
続いて「大牧温泉のりば」。
この交通網が発達した時代に、1日4本限定の遊覧船に乗らないと行くことができないまさに秘境。生きてるうちに一度は行きたい。今世のうちにしたいことが、また増えた。
今回は温泉に行く時間がなかったので、船と川を眺めた。
富山の川はとにかく水が豊富で綺麗。それもそのはず。北陸コカ・コーラボトリング本社は富山県高岡市にある。N氏に話を聞けば『プールの水=いろはすと同じ水(もちろん塩素は入れてるけど)。だから富山県民が水を買うことはほとんどない』とのこと。
雄大な河を眺めながら山中を進み、世界遺産「五箇山合掌造り集落」へ。今回の旅で、はぜが最も楽しみにしていた場所だ。
まず、菅沼集落へ。
なんと、集落へ降りるためのエレベーターがある。
以前は集落前まで車での移動が可能だったが、道幅が狭く危険&路肩駐車等で景観を損ねるため、エレベーター移動になったらしい。
集落へ足を踏み入れると、映画のような世界だった。現代から切り取られたように別の世界が広がっていた。
山から流れてくる水は、手ですくって飲めるほど新鮮だ。
その水が畑に張られ、鏡のように空を映し出す。
ポストも丸みを帯びている。
はぜは昭和63年と、ほぼ平成生まれ。もちろん昔の風景など見たこともない。なのに『懐かしい』という言葉が自然と零れた。だが、それ以外には言葉が出ないほどノスタルジックな風景だった。ゆっくりと時間が流れている。その中に身を置く贅沢さを味わった。
その後、相倉集落へ足を運んだ。
先ほどの菅沼集落より、観光客向けに整備されている。この日も多くのバスやタクシーが止まり、外国人観光客がカメラを構えながらガイドの話を聞いていた。
運よく、屋根の葺き替え作業を見ることができた。チェーンソーで均一に整えていく。かなりの技術が必要で、後継者不足とのこと。恐らく20代前半くらいの若者が、親方の作業を食い入るように見ていた。風景を残すためには、技術者も残さないといけない。
相倉集落には、棚田があり、桔梗が咲き誇っていた。
緑の中に、美しい紫色がよく映えていた。
余韻に浸ったまま、富山の夜へ。
待ちに待ったホタルイカのほか、白エビ、バイ貝、すり身揚げを銘酒「勝駒」とともに。もう、出てくる物全てが美味しい。ため息が出るほど美味しい。感動する。
瀬戸内の白身、太平洋の赤身、佐賀県での呼子のイカなど全国の美味しい海産物は食べてきたつもりだったが甘かった。日本は広い。
そして『美味しい美味しい』と夢中になり、写真を撮り忘れる痛恨のミス。
時間をかけるという豊かさ
今回の旅は、一言で言うと時間をかける豊かさを感じる旅だった。
便利になればなるほど、人は時間をかけなくなる。仕事も移動も人間関係にも。本当の豊かさとは、自分が大切だと思うことに時間をかけられることだ。
車の中では、N氏とK氏と“価値観の話”で盛り上がった。
はぜは、子どもの頃から田舎が大好きだ。でも、周りの田舎の友達はこぞって都会に行きたがり、若者の癖に都会に憧れないのを珍しがられる事も少なくなかった。大学4回生の頃には就活時期も重なり、自分の価値観はおかしいのか?と本気で悩んだ。けど、自然の中に身を置くと『ああ、自分は間違ってなかった』と胸を張って思えるんだ。
……
そんなたわいもない話を、2人はさえぎることなく、頷きながら聞いてくれた。
若者が大人に話をする時、傾聴を求めている者が大半だと思う。人生の先輩に『うんうん』と親身になってもらえるだけで、自信になる。もちろん賛同してもらえれば嬉しいが、ただ話を聞いてくれるだけでいい。肯定・否定することなく話に耳を傾けてくれる大人と出会った若者は、自分のために時間を割いてくれていると感じた若者は、その大人を信頼するようになる。
N氏、K氏、本当にありがとうございました。また行きましょう!