Vol.18 他人から言われてはじめたことは、上手くいかなくなるその人のせいにする
地域スポーツに関する資料や論文を読んでると、必ずと言ってイイほど登場するのが1972年「体育・スポーツの普及振興に関する基本的方策について(答申)」。1968年、文部大臣が保健体育審議会に対し「体育・スポーツの普及振興に関する基本方策について」諮問→それに対する審議会の意見が書かれています。
審議会があげた施策は7つ。
1.体育・スポーツ施設の整備
2.体育・スポーツへの参加の推進
3.体育・スポーツの指導者の養成確保と指導体制の確立
4.学校体育の充実
5.研究体制の整備
6.資金の確保と運用
7.関係省庁の協力体制の確立
さらに、上の2.をピックアップ。
(1)グループづくり
自発的なグループが数多く生まれ、それが活発な活動を展開するようになるためには、施設の整備、指導者の養成確保などの諸施策を推進し、自発的なグループの活動がしやすいような条件を整備する必要がある。
しかしながら、それと同時に、これらのグループに参加するがわにおいても、その活動を自主的に行うような意識や態度を育成するとともに、その経常的な経費についても、会員自らがこれを負担するような習慣を身につけていく必要がある。
また、施設は、その施設を基盤とするグループの育成につとめ、広く国民の欲求に応じることのできるような配慮が大切である。
自発的な活動・受益者負担・拠点施設・地域住民のスポーツニーズ把握…
まさに総合型地域スポーツクラブですが、総合型クラブという名称がはじめて使われたのは確か1995年なので、これから20年以上先になります。でも「こういうクラブが地域にあったらいいよね、必要だよね」というのは、先の1964年東京五輪5年後には国も感じていたわけですね。
他人から言われてはじめたことは、上手くいかなくなるとその人のせいにする
総合型地域スポーツクラブ。
この長ったらしい名称を一気に全国に広めたのが、2000年「スポーツ振興基本計画」。2010年までに全国各市区町村に少なくとも1つは総合型クラブを育成する、と書かれ、各都道府県が一斉に動き出しました。まず数を増やそうという非常に分かりやすい数値目標だったため、国も県も予算を付けやすかったことでしょう。国→各都道府県→各市区町村と情報・予算が降りていく。ここまでは良かった。
一方、各市区町村→地域では、大きく4つに分かれた。
- 総合型クラブに対して前向き「自分たちの地域スポーツ環境をもっとよくするために、総合型クラブという発想はイイと思う」
- 総合型クラブに対して後ろ向き「今の環境で十分。新しく団体をつくれば場所と人の取り合いになるから要らない」
- 総合型クラブに興味はないけど、補助金がもらえるなら立ち上げたい
- 市町行政が音頭を取ってくれるなら関わってもいい
1~2は、自分たちの意思で決めているからいい。3も、最初は補助金目当てだったが受益者負担へ移行したクラブもある。
問題は4です。
『行政(国・県・市町)が、つくれと言ったからつくったのに』
人間乗り気がしないのに・必要だと思っていないのに、他人から言われてはじめたことは、上手くいかなくなるとその人のせいにします。
本当にこの通り↓ 人ではなく組織にも言えることです。
いろんな総合型クラブを見てきましたが、実際「イキイキしている」と感じるクラブはどこも運営側がやらされてる感なく楽しんでいます。国や県は、会員数や予算規模で“成功”を図りますが、本当の成功は恐らくこういう事なんでしょう。
市町行政の担当者の熱意に押されて関わったものの、翌年に担当者の異動でゼロからのスタートになった。体育館の指定管理者にしてもらえる予定だったのに、合併で話が流れた…
現場に足を運べば必ず耳にする話です。実際、はぜがそのクラブ側なら必ずや文句の1つや2つ言っていると思います。
ただ、文句を言っても誰も解決してくれません。ましてや行政に直接文句を言おうものなら「あのクラブは面倒だ…」と厄介者扱いされて、ますます遠ざかりかねません。
そんな暇があるなら、自分たちは本当は何がしたいのか、誰に何を届けたいのか、もう一度原点に立ち返り思いを確認する方がよっぽど意味があります。どのクラブにも会員さんがいるはず、その人は自分たちの組織に何か魅力を感じてお金を払い会員となっているはずなのです。そんな人が1人でもいる時点で、なくてもいいクラブなどありません。
最近、特にひしひしと感じていることです。