はぜのメモ帳

ニッチな地域スポーツの話とか思う事とか。

Vol.9 「自治会・町内会」についてはこの1冊だけ読めばOK

「スポーツ関係の仕事をしてます!」などと自己紹介すると、爽やかで活動的でエネルギーに溢れた印象を持たれる。しかし、はぜの趣味はゲームや読書、音楽鑑賞とインドア系が多い。

昨日も図書館に行ってたくさんの背表紙を眺めていると、「おっ」と目を引く本があったので借りてきました。

「運営からトラブル解決まで自治会・町内会お役立ちハンドブック」

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はぜは地域スポーツに関する仕事をしている。というわけで自治会・町内会(長いので以下“自治会”)をはじめ婦人会、老人会など地域コミュニティに属する人と話す機会がとても多い。なのに、その人達がどのような地域組織を運営しているか詳しく知らなかった。
これは、そんなはぜにとって最適の1冊でした。

自治会の歴史

この本、まず自治会の歴史を紐解くことからはじまります。
これが結構面白い。

 第二次世界大戦中に官制で整備された「町内会・隣組」にあるといわれていますが、これは戦時中に国策の徹底を図るための組織で、昭和22年のポツダム宣言により解体されました。
 現在の自治会・町内会は同じ地域に住む住民相互により新たに結成された団体で、その目的は良好な地域社会を形成、維持する共同活動にあります。自治会・町内会の名称には…様々なものがありますが、これらは法律(地方自治法)では総じて「地縁団体」と呼ばれています。 …その成り立ちや団体の規模は様々で、組織や事業に関して法律の規定はありません。組織や運営のルールは住民相互で取り決めします。その多くは行政の指導も及ばない任意団体です。

つまり、一度はお上の命令でつくったが解体→必要だと感じた住民自らがつくった組織…それが自治会。今でいうNPO団体(市民活動団体)の設立に近いものを感じますね。誰かからの命令を受けてではなく、思いを持った人同士が集まって構成されたのがはじまりだったと。この話を知っている自治会長はどれくらいいるんだろう。

なぜ自治会に加入しないのか

本書では、横浜市佐世保市など全国自治体を対象に調査も行っていて、その結果をグラフ掲載しているので大変読みやすいです。

その調査結果で面白いのが「なぜ自治会に加入しないのか」への回答。

  • 役員になりたくない
  • ほとんど家におらず活動に参加できない
  • 人づきあいが面倒
  • 何をしているのか分からない
  • 加入のメリットが分からない
  • 加入方法が分からない …

これ、2パターンに分類できますね。

①自治会元役員もしくは役員に知人がおり、何をしているか知っているうえで、業務内容の煩雑さや人間関係から倦厭している層
②そもそも自治会とはどんな組織で、自分の地域ではどういう事をしているのか知らないので興味がない

①はともかく、②の方に関心を向けてもらえないのは余りにもったいない。

では、どうすればいいのか。
そのヒントも書いてあります。

自治会を活性化させるための5つの方法

書いていたことは、いたってシンプル。

  1. 「地域コーディネーター」の育成
  2. ファシリテーション力を磨く
  3. 企画力を磨く
  4. 新たな仲間を増やすイベントづくり
  5. 効果的な広報PR

5項目とも「なるほど確かに」という感じですが、特に重要なのは、2と5。この2項目さえ出来ていれば、1、3、4は自然とついてくるでしょう。

参加意義の分からない会議を変える勇気

にしても、自治会についての本でファシリテーションという言葉を見ると思わなかった。

ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること
FAJ:特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会 - ファシリテーションとは

要するに、役員会や総会など会議をうまく進行する技術・手段を学ぶこと。これ、本当に重要です。

地域スポーツの現場でも、重鎮だけが10分近く喋って女性や新人はただ頷くだけで終わる演説みたいな会議。「今何をどこまで話して何が決まっているのか」委員が共有できずに次第が進んでいく会議… そんな会議をどれほど見てきたか。
会議自体をやったという実績は残ったとしても、参加者が「自分は何のために参加したのか」と参加意義を感じることができない会議は衰退の一途をたどります。

そんな現場には、㈱ひとまちホワイトボードミーティングを一度見てほしい。
これ、最高にいいです。

ぜひ多くの地域で取り入れてほしい。

wbmf.

過去でなく未来の情報発信を

はぜは大学4回生の頃、地域スポーツをテーマに卒論を書きました。その時、最も困ったのが、まさかの情報収集でした。この情報に溢れたご時世に。

K●NAMIや日本体育協会など、民間企業や行政・財団のHPはググったり図書館に行くといくらでも出てきました。だからスポーツの歴史や概要等はわかるのです。でも、個々のスポーツ少年団や総合型地域スポーツクラブ、地区体育協会のHPはいくら検索ワードを増やしても早々出てこない。個々の団体が「いつどこで何をしているのか」が全く分からないんです。

本書にも同じようなことが書いてあります。

これまで多くの自治会・町内会の会報誌を見てきましたが、そのほとんどが既に終了した事業の結果報告、過去の話に終始しています。また、会報誌は一般向けには会員向けに配布されるもので、外部とのコミュニケーションツールとはなっていません。

今だからわかりますが地域スポーツ団体の多くは、①口コミ、②各地区小学校/地区公民館でのチラシ配布、②校区内スーパーのレジ付近でのポスター掲示等が大半です。共働きが大半の子育て世代の目に、どれほど留まるか。
HP開設とは言いませんが、ブログやSNSがあるだけでも違います。

情報が欲しい人の下に、欲しい情報を適切な手段で届けることができているか。地域団体の永遠の課題だと思います。

興味はないが関心は高い自治会

この記事を書きながら、以前、NHKクローズアップ現代」で自治会の特集が組まれたことを思い出しました。確か視聴率は10%を越えたと思う。

www.nhk.or.jp

自治会って、それだけ国民にとって身近で関心も高いテーマなんですね。
そして、言い方は悪いが薬にも毒にもなる組織です。

こんなご時世だからこそ、多世代の地域住民が一堂に集まって「今何をやるべきで、そのために何を残して何を廃止して何をはじめるべきなのか」語り合う場が必要だと感じますね。